はぁ・・・、と気が付いたら溜め息を吐いていた。

ずるずると背中を壁に預けて、座り込んだ。




「・・・思ってたより・・・キツイな・・・」




フラッシュバックするのは、宮間の手首を掴んだ赤堀が、アイツを連れ去っていく映像。




傷つかないと思ってた。

平常心でいられると思ってた。



例え、傷ついたってすぐに笑えると思ってた。


傷は浅いと思ってた。




――そう思っていたのに。





分かってた。

宮間の視線の先に、誰がいるのか。



うん、分かってた。


だって、アイツが宮間に笑うたび、宮間がアイツを見つめるたび、心が握りつぶされるような気がしてたんだ。


ずっと、分かってたから。



だからこそ、今更、傷つくことなんて無いと思ってたのに。




言葉にならない想いが、心の中を駆け巡る。


でも。


「はぁ・・・」


漏れるのは、小さな溜め息だけ。




そんな時だった。


「・・・そんなに溜め息ついてたら、幸せ逃げちゃうよ?」



そう、言われたのは。