「え・・・?」
当然、赤堀の口からは困惑した音が零れた。
「ボール、体育研究室の前に置きっぱなし。
・・・だから、取りに行くよ?」
「・・・ボール当番、俺だから・・・。
・・・俺が行く」
気まずそうに言葉を発する赤堀。
でも、小さく首を振った。
「私が勝手について行くだけ」
「けど・・・っ」
「いいから」
赤堀の言葉を遮って、歩き出した。
少しだけ間を開けて、あいつもついて来る。
何も話さないまま、私達は歩き続けた。
体育研究室の前に着き、私がボールの入った箱を抱えると、後ろから声が落ちて来た。
やっぱり、気まずそうな声が。
「・・・宮間・・・、俺・・・」
視線をボールの箱に落とす。
何て言えば、赤堀に伝わるんだろ?
何て言えば、あいつはまた笑ってくれるんだろ?
歩きながら考えていたけど、結局見つからなかった言葉。
それでも、気付けば、口が勝手に動いていた。

