「・・・何で、私にそんなこと言うの」
さくらんぼ色の唇から、片倉先輩は音を漏らした。
「あなたに、嫌がらせしたのは・・・私だよ?
それなのに、何で・・・」
正直言って、最初は片倉先輩が苦手だった。
・・・言ってしまえば、見た目がチャラそうで。
それだけでも苦手なタイプなのに・・・片倉先輩に突き飛ばされて、怪我をして。
悲しかったし、悔しかった。
それに、ちょっと苛ついた。
だけど、片倉先輩が私にぶつけた言葉達。
自分の気持ちと向き合えなかった私。
その背中を押したのは、間違いなく片倉先輩だった。
迷いを消すように、私は言い切った。
「好きなだけ、ですよね」
「え・・?」
戸惑いを隠せない片倉先輩の声が、教室に響いた。
「・・・分かってたんです。
先輩が・・・赤堀のことを大好きで、好きで仕方ないんだって。
だって・・・赤堀と話しているときの先輩は、一番幸せに見えたから」
そう、あの時、赤堀と先輩が話していた時。
嫌だったのは、赤堀が私に気付かなかったからっていうだけじゃない。
赤堀と話している先輩が、思わず目を逸らしたくなるほど、可愛くて幸せそうだったから。
赤堀が好きなんだって、分かったから。

