「あのね、小林先生が・・・」
「あ・・・、そっか。それで・・・」
「うん。あとね・・・」
断片的にしか聞こえない会話が、逆に私の心を揺らす。
何も、聞こえないくらいのほうが良かったのに。
それでも・・・先生に頼まれただけみたいな様子に、私がホッとしたのは隠し切れない事実だった。
・・・ダメだ、意味分かんない。
何で私、今、ホッとして・・・。
「あ・・・!」
琉依が打ったスマッシュが、ほんの少しだけアウトする。
そのままの勢いで翔けるボール。
それが、向かっていったのはあの、ドアのほうだった。
また、うるさくなる鼓動。
表情を崩さないようにしながら、ボールを拾いにいく。
段々とクリアになっていく会話。
「じゃあ、そういうことだから・・・」
「了解、わざわざありがとな」
「ううん、大丈夫」
髪が綺麗なその子が、来たときと同じようにそっとドアを開けた。

