ドクン、と心臓が音を立てる。
1番ドアに近い台で打っていた私は、ただ何も出来ずに立ち尽くしていた。
「・・・どうかしたの?」
赤堀が小走りで、ドアのほうへ向かう。
赤堀の声にまた、心臓が音を立てた。
その声から、顔を背けるように私は視線を逸らす。
「続き、やろ?」
琉依に声を掛けると、琉依は小さく頷いた。
カコン・・・、パコン・・・。
ボールがラケットや台に当たる度、軽やかな音を立てる。
なのに、その音がいつもより重く聞こえたのはどうしてなんだろう。
飛ばしたボールを取りに行く時に、自分の心臓がまだうるさいことにやっと気付いた。
赤堀たちの会話が微かに聞こえてくる。
聞きたくなんか、ないのに。

