2年3組乙女事情


「栞那ちゃん、何で遅れたの?」


「え……あ、うん。これ……」



乗り込んだバスの中。

隣に座ったくるみが不思議そうに聞いてきた。


席は2人掛けだから、唯真は私達の1つ前に座ってる。



隣は、七瀬か。

去年も同じクラスだったから、会話が止まって……なんてことはないと思う。



「目薬?買ってきたの?」



ますます不思議そうな顔のくるみに、私は苦笑いをした。


くるみの後ろから入り込んでくる外の光が、目にしみる。



「奥間さんがくれたの。バイトのお昼休みに買ってきてくれたんだって」


「へ?何で?」


「ほら、朝に少し話したって言ったでしょ?それで、私が普通の目薬しか持ってないの知って、ちゃんとしたヤツを買って届けてくれたの。
今日の予定だと、自分で買いに行く時間はないだろうからって」


「きゃーっ!唯真ちゃん唯真ちゃん!大ニュースだよっ」



立ち上がって前の席を覗き込むくるみを、必死で止める。


これじゃあ、七瀬にまでバレちゃうじゃん!



さっきのくるみ以上に不思議な顔をする2人を見て、私ははぁ、と溜息をついた。





「何?その、絵に描いたみたいな良い人……」



無理やり引き込んじゃった七瀬にも今までのことを説明したら、そんな言葉が返ってきた。



「とりあえずさ、それだけお世話になってるなら、何かお礼したいよね」


「お礼?」


「そう!だって、ここまでしてもらって修学旅行が終わったらサヨナラなんて……寂しくない?」