2年3組乙女事情

「早く!次の日程に遅れるぞ!」


「は、はいっ!」



ジャージのポケットから、慌ててケータイを取り出す。



お母さんから、何があるかわからないからケータイだけは絶対に持ち歩けって言われてるんだけど……


まさか、その癖がこんな状況で役立つなんて思ってもいなかった。



言われるままに、お互いのケータイをまっすぐつなげる。


画面に出てきた“奥間ミサキ”の文字に、胸がとんっと跳ねた。



「じゃ、連絡するからケータイ見とけよ?俺は、そろそろバイトの時間だから」


「は、はいっ!」



まだ、バイトはじまってなかったんだ……。


早起き、なんだな。



海の家の中に消えた背中を想い浮かべながら、私は急いでホテルに向かった。









「手島さん、集合時間過ぎてますよ!」


「すみません、先生。次は気をつけます!」



今日の午後は、バスを使った団体行動。


出欠確認に遅れた私は、整列するみんなの視線を浴びながら、列に混ざった。



出席番号順なんだけど……


一番前に座る雨宮さんの視線が痛い。

あ、でも、いつもよりもメイクは薄めかも。


榎本さんは、相変わらず眠たそうだなぁ……



そのまま、何事もなかったみたいに先生の話を聞きながら

私は右手に持った小さな紙袋をぎゅっと握った。