「で、ホテル帰還命令か」
「はい。……拉致されたので戻ってませんけど」
「拉致じゃねーし。合意の上だ」
にっと片方の頬を上げる奥間さんが、いろんな意味で眩しくて見えない。
走るのを免除されて、ホテルに戻る途中で呼び止めてくれた奥間さん。
どうせホテルに戻っても暇だからって、こうして雑談に付き合ってくれてるわけだけど……
こんなひどい顔を見られるなんて、昨日の水着の何倍も恥ずかしい気がする。
てゆーか、バイトはサボってて良いのかな?
まだ始まってないとか?
緊張でぼーっとする頭と、じんじんする目にパニックになりながら話していると
砂浜の先にピンク色のジャージが見えてきた。
「おっ、そろそろ時間か……。お前、今日の予定は?」
「へ?今日は、午前中が調理実習で、午後は博物館の見学と近くの観光」
「調理実習なんてあんのか……。午後の予定始まる前、少し時間ある?昼飯の後とか」
「え……はい。たぶん、少しなら」
今度は、はてなマークで頭がぼーっとする。
「そ、じゃあメアド、教えて」
「え……は?」


