少しごわごわした、冷たい布の感触がする。
心地がいいような、悪いような不思議な感覚を覚えながら、あたしはゆっくりと目を開けた。
目の前に広がったのは窓枠からはみ出した薄い赤色の光。
静かな空間に、ぱらりと紙をめくる音がする。
ゆっくりと音のした方を振り向くと、そこには峯岸美海が座っていた。
「やっと起きたんだ」
あたしに気付いた彼女が、読んでいた本を置く。
「授業は?」
「もう終わってる。当たり前でしょ?」
確かに。
外の景色から考えれば、今が授業をやってる時間じゃないことくらい簡単に想像できる。
「今、何時?」
「……5時12分だけど」
「あたし、バイトに行かなきゃ」
そう言って起き上がろうとしたら、肩を押さえ付けられた。
「過労、睡眠不足、軽い栄養失調、ストレスのためすぎ。
どんだけ抱えれば気が済むの?今日はバイトくらい休んで」
まっすぐにあたしを見る目は、とても綺麗で、強い。
でも、あたしが休むわけにはいかない。
「納得してないみたいだけど……。
こうして倒れられて保健室へ運ぶ私の身にもなって。大変だったんだから」
そこまで言うと、峯岸美海はあたしの通学鞄を差し出した。
「荷物、持ってきたから。かなり無理したけど、教科書類は全部詰めたからね。いつもそうしてるみたいだし」
その言葉に驚いて、あたしは顔を上げた。
「知ってたの?あたしが教科書を全部持って帰ってること」
「うん。雨宮さんってかなりの勉強家だよね。
授業中に見てて思った。指も固くなってるし」
こんなにも派手な格好のあたしを見て、そう判断したのは峯岸美海が初めてだ。
みんながあたしを腫れ物扱いする中でありのままを見ていてくれる人がいるなんて、思ってもいなかった。
心地がいいような、悪いような不思議な感覚を覚えながら、あたしはゆっくりと目を開けた。
目の前に広がったのは窓枠からはみ出した薄い赤色の光。
静かな空間に、ぱらりと紙をめくる音がする。
ゆっくりと音のした方を振り向くと、そこには峯岸美海が座っていた。
「やっと起きたんだ」
あたしに気付いた彼女が、読んでいた本を置く。
「授業は?」
「もう終わってる。当たり前でしょ?」
確かに。
外の景色から考えれば、今が授業をやってる時間じゃないことくらい簡単に想像できる。
「今、何時?」
「……5時12分だけど」
「あたし、バイトに行かなきゃ」
そう言って起き上がろうとしたら、肩を押さえ付けられた。
「過労、睡眠不足、軽い栄養失調、ストレスのためすぎ。
どんだけ抱えれば気が済むの?今日はバイトくらい休んで」
まっすぐにあたしを見る目は、とても綺麗で、強い。
でも、あたしが休むわけにはいかない。
「納得してないみたいだけど……。
こうして倒れられて保健室へ運ぶ私の身にもなって。大変だったんだから」
そこまで言うと、峯岸美海はあたしの通学鞄を差し出した。
「荷物、持ってきたから。かなり無理したけど、教科書類は全部詰めたからね。いつもそうしてるみたいだし」
その言葉に驚いて、あたしは顔を上げた。
「知ってたの?あたしが教科書を全部持って帰ってること」
「うん。雨宮さんってかなりの勉強家だよね。
授業中に見てて思った。指も固くなってるし」
こんなにも派手な格好のあたしを見て、そう判断したのは峯岸美海が初めてだ。
みんながあたしを腫れ物扱いする中でありのままを見ていてくれる人がいるなんて、思ってもいなかった。


