2年3組乙女事情

  
「……ちょっと!栞那ちゃん大丈夫!?」


「真っ赤だね……」


「うぅ……」



海で遊んだ次の日の朝。

ホテルに付いてる目覚まし時計の機械音で目が覚めた。


目は覚めたんだけど……



「痛くて、目が開けられない」



涙を流しながらそう言う私に、目の前の2人がはぁ、と溜息を吐くのが聞こえた。



海の中は本当に綺麗だった。


綺麗なんて言葉で片付けるのも何か気が引けちゃうけど……


さらさらした砂に、予想以上に透き通った水の中。

ゆっくりと進む私達に、自由にふらふらする小さい魚。


みんながみんなキラキラしてて、何だか少し羨ましいような気分にもなって。


そんな綺麗な水の中は、私の心と一緒に……体力まで奪っていった。



「コンタクトしたまま寝ちゃったからだ……。とりあえず、ゴミ箱取って」


「これ。目薬と眼鏡は洗面所だよね?そっちも今、持ってくるから」



そう言って洗面所に向かう唯真を、私はゴミ箱を抱えながら背中で見送った。



疲れてて、コンタクトレンズを取り忘れて寝ちゃった私。

その代償は、真っ赤になった目と、止まらない涙と、持ち上がらない瞼。


とりあえず、使い捨てのコンタクトレンズを捨てて、目薬を点してから眼鏡をかけた。


これ、帰ったら眼科かなぁ……



「とりあえず、着替えて降りる?走るのは辛いかもしれないけど、行かないわけにはいかないし……。状態見れば、先生もお休み許可してくれるかもよ?」


「そうだね、そうするよ」


「やばっ!もう時間ギリギリだよ!栞那、頑張って走って!」


「う、うん!」



いつもよりはるかに狭い視界に戸惑いながら、私は2人の後を追った。