「……ちょっと!栞那ちゃん大丈夫!?」
「真っ赤だね……」
「うぅ……」
海で遊んだ次の日の朝。
ホテルに付いてる目覚まし時計の機械音で目が覚めた。
目は覚めたんだけど……
「痛くて、目が開けられない」
涙を流しながらそう言う私に、目の前の2人がはぁ、と溜息を吐くのが聞こえた。
海の中は本当に綺麗だった。
綺麗なんて言葉で片付けるのも何か気が引けちゃうけど……
さらさらした砂に、予想以上に透き通った水の中。
ゆっくりと進む私達に、自由にふらふらする小さい魚。
みんながみんなキラキラしてて、何だか少し羨ましいような気分にもなって。
そんな綺麗な水の中は、私の心と一緒に……体力まで奪っていった。
「コンタクトしたまま寝ちゃったからだ……。とりあえず、ゴミ箱取って」
「これ。目薬と眼鏡は洗面所だよね?そっちも今、持ってくるから」
そう言って洗面所に向かう唯真を、私はゴミ箱を抱えながら背中で見送った。
疲れてて、コンタクトレンズを取り忘れて寝ちゃった私。
その代償は、真っ赤になった目と、止まらない涙と、持ち上がらない瞼。
とりあえず、使い捨てのコンタクトレンズを捨てて、目薬を点してから眼鏡をかけた。
これ、帰ったら眼科かなぁ……
「とりあえず、着替えて降りる?走るのは辛いかもしれないけど、行かないわけにはいかないし……。状態見れば、先生もお休み許可してくれるかもよ?」
「そうだね、そうするよ」
「やばっ!もう時間ギリギリだよ!栞那、頑張って走って!」
「う、うん!」
いつもよりはるかに狭い視界に戸惑いながら、私は2人の後を追った。


