「確かに!玲ちゃんの言う通りだよ。
それにきっと、もしもチカが男の子と影でいっぱい遊んでて、経験豊富だったら、それは今のチカじゃなくなっちゃうもん。
そんなの、もったいないじゃん?」



にこっと笑う佐奈に、ちょっとドキっとする。



「でも、2人ばっかに話させちゃって……狡い、とか思わない?」


「思わない」



不安でちらっと視線を上げたら

2人の言葉が重なった。



「あたしは違うけど、榎本さんは話したくてウズウズしてるはずだし」


「いや、玲ちゃんもだね!」


「そんなこと……ない」


「ほらぁ!
そんな顔して『ない』なんて言っても、説得力も何にもないんだからね!」



言い合う2人を

あたしはぽかん、と見つめるしかなかった。


……どうなってるの?



「考えてみてよ!
チカは今までに彼氏が0人、玲ちゃんは1人、あたしは2人。しかも当たり前だけど、あたし達が恋した男の子はみんな違う人。
もちろん、あたし達もみんな違う。
だから、こーやって話してるといろんな話が聞けるし、いろんな意見が出てくるんじゃない?」


「でも、彼氏0人のあたしは、2人に何にも言えないよ?アドバイスとか意見とかもないし……」


「でも、だからこそ言えるアドバイスだってあると思う」


「え?」



静かにそう言う杉野さんに、あたしはすっと視線を移した。



「今の静里さんだからこその客観的だったり、冷静だったりする視点で話をしてくれれば良いんだよ。
静里さんが思ってる以上に、それが役立つこともあるだろうし。
それがなかったら、榎本さんなんか一途すぎて暴走しそうだし……」


「確かに。佐奈は正に、“盲目”だよね」


「……2人とも、どーゆー意味よ?」



軽く膨れる佐奈を見て、杉野さんとあたしは笑った。



そういえば、こーゆー瞬間ってよくあるかも……


そう思ったら、何だか肩の力が抜けた気がした。



今は、あたしの怖がってた話の真っ最中だけど

こんな話をしてるけど


あたし達は、普段と何にも変わらないんだもん。