2年3組乙女事情

佐奈の言う通りだと思う。


女子高生としては情けないかもしれないけど

あたしにも、高校に入ってからあたしが男の子と話す場面があった記憶がない。



弟は例外だし

その他に若い男の人って言うと、社会の穂高先生くらい?

でも、あの人だって先生だし。



佐奈みたいに部活にも入ってないし

杉野さんみたいに恋に落ちるような幼なじみもいない。



「あのさ、参考までにだけど、彼氏がほしいと、思ったことはないの?」



杉野さん……何の参考にするんだろう。


そう思いながらも、あたしは佐奈がさっき投げた枕を無意識に抱きながら、考えた。



「たぶん、ほしいとは思ってると思う」


「じゃあ、作っちゃいなよ!」


「いや、でも、簡単に作れるものじゃないでしょ?お金で買えるわけでもないし……。
まず出会って、何かいろんなプロセスがあって、お互いに合意しなきゃ彼氏とか彼女とかにはなれないわけじゃない?
それって……あたしには難しいよ」



そう言って、抱いてた枕に顎を埋めた。

あたしはこの瞬間が、とてつもなく嫌いだ。



ガールズトークは楽しい。

みんなの話を聞くと幸せになれるし

女子高生の旅行には欠かせないと思う。

面白いとも思う。



でも、それは人の話を聞いている間だけ。


トークの中心になる“恋愛”ネタを持ってないあたしは、語る番になるとその場を静かにしちゃうし、惨めな気分にもなる。