「だから何?」


せっかくいいところなのに……。


そう思いながら、のろのろと亨を見た。



そしたら、さっきよりも亨の顔が大きく見えて……。



すぐに、唇に不思議な圧迫感があった。



「え?」



今まで通りの解放感に気付いたあたしは、わけがわからなくて、ただ首を傾げた。



亨の顔は、恐いような、優しいような、悲しいような……


とりあえず、変な感じになってた。



「どうしたの?亨……」


「玲ってさ、すっげぇ鈍感」


「そんなことないよ」


「そんなことある」



机を挟んで反対側にいた亨が、あたしの肩にぽん、と両手を添えた。


まっすぐな目を見る。

もう、さっきまで夢中だった本のことなんて、頭の中から消えてなくなった。