修学旅行は、ピアノにとって邪魔以外の何物でもないから……――――



行先は沖縄。

期間は3泊4日。


その間、鍵盤には全く触れなくなる。


しかも、リア女は女性らしさを磨くためとかで、1日だけ郷土料理を自炊する日がある。



これが、また修学旅行のダメさを上げるポイントになってるんだよね……。





「芽依。
ご飯の時間だから、そろそろ休憩にしてちょうだい」


ノックもなしにピアノが置いてある部屋のドアから、ママが顔を出した。


「わかった」


「また、食べ終わったら練習するのよ。
それと、ちょっと音に乱れがあったけど?」



少し眉間にしわを寄せながら、ママが言った。



「本当に?」


「本当よ。
集中してない証拠ね。
他事なんて考えてなくていいから、しっかりと綺麗な音を出すことだけを考えなさい」


「はい……ママ……」



私は、すたすたとキッチンに向かうママの背中を、静かに追った。