「じゃあ、あたしは本当に勘違いしてたってこと?」


「だからそう言ったじゃん。
別れるって言ったの、取り消してくれる?」


彰宏が、真剣な顔でそう言った。


よく見ると、知美ちゃんの手にある袋には、柔道着も入ってる。


「ごめんね、彰宏。それに、知美ちゃんも。
ちゃんと確認しなかったあたしもいけなかったよね。
……別れるなんて、もう言わないから」



そう言って彰宏を見ると、彼は今までに見たことがないくらい眩しく、にっこりと笑ってた。



「良かったぁ!
じゃあ、果歩。今日は久しぶりに家まで送ってくよ!」


そう言ってくれた彰宏の腕に、あたしは迷わず抱きついた。


そんなあたしを見て、瑛梨奈ちゃんと亜希帆ちゃんは呆れたみたいに笑ってる。





ねぇ、彰宏。

あたし達は、ちゃんと話してるつもりで、話してなかったよね。


お互いの行動。


お互いの気持ち。



もちろん、全部を話しちゃえばいいってものじゃない。


でも、必要な話題をちゃんと選んで、必要な時間をちゃんと割いて話し合えば、きっと今回みたいなことにはならなかったんだ。



「これからもよろしくね、彰宏!」


「うん。でも何?急に」


「別にー!何でもなぁいっ!」




夕暮れの1本道に、2人の影が楽しそうに揺れた。



〜3番 木原果歩 END〜