「雨宮さん! 何なの!!?その耳は!」


「ピアス開けたの。可愛いでしょ?」


次の日。

当たり前のように校門で呼び止められた。


くすんだピンクのフレームの眼鏡をかけたおばさん先生は、ウチのクラスの担任だ。


肩の辺りががっしりとした紺色のスーツは、いつ流行ったものなのかわからない。


わかりやすいくらいに、あたしのなりたくないおばさん像ナンバーワンなのが先生だ。


「開けた……ってあなた、そんなみっともない!
そんなことをして遊んでる暇なんてないでしょう! 今は学生として勉学に……」


「それ、学年1位のあたしに言う台詞?」


おばさんが喚いてる最中だったけど、わざと笑顔で言い返して校舎へ向かった。



髪は茶色だし、ゆるくパーマもかけてる。


ナチュラルに見えるメイクだって、肌を整えるところからしっかりとやる。


リア女名物の薄いピンクのチェックスカートも、他の子よりは短いかもしれない。



でも、それと勉強とは別問題。


学年1位の成績を、手放すつもりは全くない。



大学に行けずにニート……なんて、絶対に嫌だし。


だから、今しかできないお洒落も、今やらなきゃいけない勉強も、全力でやる。




それが、あたしのモットー。




そんなわけで、お洒落も捨てられないあたしは、唯一バイトが早く終わる昨日、祐貴に頼んでピアスの穴を開けてもらった。



遊び人風のあたしと、真面目なスポーツ少女の祐貴。


幼馴染でクラスメートのあたしたちだけど、学校では話をしないようにしてる。


どう考えたって、それが祐貴のためでしょ?


気付いたら出来上がっていたこの習慣は、きっとこれからも変わることはない。