彼の部屋に私物を置くのは嫌いだ。



相手のテリトリーを侵したくないし、あたしのいない間に私物がどう扱われてるかって考えると落ち着かないから。



メイク道具は嫌。

歯ブラシも嫌。

100歩譲って着替えのジャージを置いたとしても……



真っ黒なエナメルのハイヒールなんて、彼の部屋には預けない。



「どういうこと……?」



そもそも、このハイヒールのサイズはあたしには小さい。


それに、身長が平均より高いあたしは、こんな靴は選ばない。



「ちょ、ちょっと出て!」


「は?」



体の半分くらいではこの状況の意味を把握してる。


でもあとの半分が、それについていけてない。



バタンと勢いよく閉めたドアを押さえながら、部屋の主は焦ったように口を開いた。



「とりあえず、もうここには来るな」


「どういうこと?」


「いや。もう、俺から話すことはないから」


「は?」



話についていけないあたしを放って、彼がそのままドアの奥に消える。



……えーと?


とりあえずわかるのは……



カメリア女子学院高校

2年3組19番、渡部侑[わたなべいく]




あたしが

クリスマスムードの高まるこの時期に、彼氏をなくしたってこと……かな?