「やっぱりさぁー、青春と言えば部活だよね!」



文芸部の部室に乗り込んだあたしは、カタカタとパソコンを鳴らす部長に向かってにっこりと微笑んだ。


赤の細いフレームの奥から、部長が視線だけをあたしに移す。



「そう思うなら、どうしてここに来たの?」



キーボードに手を乗せたまま、じっと睨みつけるようにそう言う部長は、明らかに不機嫌だ。



部長とあたしのやり取りなんて気にしてないのか、奥の窓際のソファーでは杉野さんが黙々と本のページをめくってる。



「だって部室でしょ? ここ」


「いや、真逆じゃん!私が言うのも変な話だけど、青春したい人が来る部室じゃないでしょ、ここ!」



……あれ、意外にテンション高め?



1組の部長とは、去年も違うクラスだった。


だから、きっちりと斜めに流れた黒髪に、赤いフレームの眼鏡が格好良い部長とちゃんと話すのは……もしかしたら初めてかもしれない。


挨拶くらいならしたことはあるから、顔は知ってるんだけどね。



「だって、ここ楽そうだし」


「今、楽そうって言った?漢字の選択あってるけど、読み方だいぶ間違えてんじゃない!?
大体、どうして部活? いきなり部活?」



あー……

部長がこんなにもファンキーだったなんてびっくりだ。


どっちかって言うと、物静かな感じの人だと思ってた。



だって、文芸部の部長さんだよ?


静かじゃないなんて、イメージ違反にも程がある。


あたしは、小さく溜息を落としてから口を開いた。



「あたしには、青春が足りないと思って」


「は?」