「あ……」
「穂高先生なら大丈夫。もし何かマズいことがあれば、先に口止めしておくし」
そう言った雨宮さんは、すごく綺麗に笑ってた。
「穂高先生とは……ちょっと仲良しだから。心配しないで」
「うん、ありがとう。お願い」
雨宮さんなら信用していい気がして、あたしは素直に頷いた。
それを見て軽く頷いてから、教室の真ん中の方に向かって歩き始めた雨宮さんを視線で追う。
穂高先生が生徒と付き合ってる。
そんな噂が流れたことがあったけど、それが雨宮さんだったのかな?
さっきの“仲良し”って言う意味も、もしかしたらそうなのかもしれない。
まぁ、雨宮さんも穂高先生も、そんなタイプには見えないからただの噂だったんだと思うけど。
峯岸さんと話す雨宮さんを見ながらぼーっと考えていると
「席に戻って」とおばさん先生の声が響いた。
「山村!」
教室で思いっきりだらだらした後、校内用の靴からローファーに履き替えていたところで、穂高先生に呼び止められた。
一緒にいた果歩ちゃんと亜希帆ちゃんも、同時に先生に視線を移す。
いつもと変わらない表情で近づいてくる先生を見ながら、井上律とのツーショットを思い浮かべる。
何を言われるんだろう……――――
あたしは、ぐっと息を飲みこんだ。


