すりむいた膝も、腕も、どうでも良い。
「な、なせ、ちゃん……」
「聡さん!? ちょっと!何で?」
どこからかだらだらと血を流す聡さんを見て、私は思わず駆け寄った。
「ごめんね、足……すりむいちゃったよね」
「そんなこと良いから!今救急車も来るから、静かに待ってて!」
「僕はこれでも、お母さんの旦那さんだし。七瀬ちゃんのお父さんだからさ」
「黙ってってば!」
赤信号になりかけてたのか、なってたのかはよくわからない。
でも、横断歩道を渡ってる私に車が近づいてきて……
はねられかけた私を聡さんがかばってくれたことは確かだ。
……そのおかげで、聡さんがボロボロになっていることも――――
「やっぱり、娘のことは守らないとね。……1メー、トル……」
「良いから!
ちょっと、しっかりしてよ!何か言ってよ!ねぇ!」
死ぬの? このまま?
冗談じゃない!
私はまだ、何も……何もこの人に、言いたいことを伝えてないのに。
勝手に守って、勝手に言って、勝手に死ぬって……
そんなドラマみたいなことが、現実にあってたまるか!
「起きてよ……ねぇ! お父さん!」
乾いた、小さな叫び声が、ざわざわとした道路の隅っこに消えた。
「な、なせ、ちゃん……」
「聡さん!? ちょっと!何で?」
どこからかだらだらと血を流す聡さんを見て、私は思わず駆け寄った。
「ごめんね、足……すりむいちゃったよね」
「そんなこと良いから!今救急車も来るから、静かに待ってて!」
「僕はこれでも、お母さんの旦那さんだし。七瀬ちゃんのお父さんだからさ」
「黙ってってば!」
赤信号になりかけてたのか、なってたのかはよくわからない。
でも、横断歩道を渡ってる私に車が近づいてきて……
はねられかけた私を聡さんがかばってくれたことは確かだ。
……そのおかげで、聡さんがボロボロになっていることも――――
「やっぱり、娘のことは守らないとね。……1メー、トル……」
「良いから!
ちょっと、しっかりしてよ!何か言ってよ!ねぇ!」
死ぬの? このまま?
冗談じゃない!
私はまだ、何も……何もこの人に、言いたいことを伝えてないのに。
勝手に守って、勝手に言って、勝手に死ぬって……
そんなドラマみたいなことが、現実にあってたまるか!
「起きてよ……ねぇ! お父さん!」
乾いた、小さな叫び声が、ざわざわとした道路の隅っこに消えた。


