「よし、できた。完璧だろ」
両腕を突き上げて伸びをした翼を見てから、手元に視線を落とした。
スカートと同じ色のピンク。
それより少し濃いピンクで作られた、太めのフレンチ。
そのフレンチの中に描かれた、白の水玉模様。
とてつもなく長く感じた時間も、私が筆を放棄した時からそんなに進んではいなかった。
「す、すごい……」
「当然だ。俺を誰だと思ってんだよ」
「……すみません」
「まだ乾いてねぇんだから、動くの我慢できないなんて言うなよ」
そう言うと、翼はくるっとソファーに背を向けた。
さっきまでの真剣な態度はどこにいったんだか……。
ただのワガママ人間に戻った翼を見て、思わず顔を歪ませる。
「こんな小さい所に、よくこんなにも綺麗に模様とか線とか描けるよね」
「小さいか?」
「小さいよ!爪だもん。しかも、筆だっていつものと比べ物にならないくらい短いんだし。
やりにくくなかったの?」
翼は、考えるようなしぐさをしてから口を開いた。


