2年3組乙女事情


「よし、できた。完璧だろ」



両腕を突き上げて伸びをした翼を見てから、手元に視線を落とした。



スカートと同じ色のピンク。


それより少し濃いピンクで作られた、太めのフレンチ。


そのフレンチの中に描かれた、白の水玉模様。



とてつもなく長く感じた時間も、私が筆を放棄した時からそんなに進んではいなかった。



「す、すごい……」


「当然だ。俺を誰だと思ってんだよ」


「……すみません」


「まだ乾いてねぇんだから、動くの我慢できないなんて言うなよ」



そう言うと、翼はくるっとソファーに背を向けた。



さっきまでの真剣な態度はどこにいったんだか……。


ただのワガママ人間に戻った翼を見て、思わず顔を歪ませる。



「こんな小さい所に、よくこんなにも綺麗に模様とか線とか描けるよね」


「小さいか?」


「小さいよ!爪だもん。しかも、筆だっていつものと比べ物にならないくらい短いんだし。
やりにくくなかったの?」



翼は、考えるようなしぐさをしてから口を開いた。