2年3組乙女事情

「科目にばらつきがあるのでこれが正確なグラフだとは言い切れないんですけどね」


「このグラフとこの記事の話に、どう関係があるって言うんだ?」


「よく見ていただければわかりますよ」



教頭先生だけじゃない。


集まっていた先生が、不思議そうな顔をしてグラフを見ていた。


……ご丁寧に、あたしの低い点数まで書いてあるし。



溜息を吐くあたしなんてお構いなしに、瑤はシャツの胸ポケットから取り出したシャーペンでグラフを指した。



「定期テストの点数は一定で、ずっとグラフの底を漂っていますよね?
ですが、実力テストと学外の模試については、徐々にではありますが、右肩上がりになっているのがわかると思います」


「……定期テスト後に行う追加課題の学習成果は、古い範囲の問題が出る模試や実力テストにしか表れない」



いつの間にかグラフを覗き込んでいたありすが、瑤の言葉にそう続けた。



「だから定期テスト以外のグラフが伸びてるんだって言いたいわけね?」


「さすが雨宮さんですね」


「定期テストがこの点数だと、課題でも出してフォローするべきかもしれないな……」



野次馬的に集まってきた国語の先生が、苦笑いをしながら呟いた。


それに合わせて、他の先生達の間で静かなアイコンタクトが行われる。



「ついでに言うと、穂高先生が峯岸さんにしか課題を出してないっていうのは嘘です。
あたし、いつも自主的に課題はもらってるし。ほら、今日も」



いつの間に持ってきたのか、ありすはあたしが瑤から渡されたプリントの束を掲げた。



「先生も授業で、欲しい人は取りに来るようにって言ってるし」



茶髪もパーマもピアスも健在のありすの迫力に押されてか、先生達の勢いが落ちる。



……もしかして、何とかなる?



でも、この記事を書いた子に会話の内容を聞かれてたんだとしたら……――――