「穂高先生、どういうこと?」
「どういうことも何もないですよ。これは峯岸に今回の現代社会のテスト分の追加課題を渡していたところです。
僕の服装と彼女の髪型から、これが今日のものだってことはすぐにおわかりでしょう?」
「でもここには、“峯岸さんだけに毎回課題を出す”って書いてあるし……。
最近、彼女との仲を疑う噂が流れてるとも書いてあるけど?」
ありすと一緒に職員室に入ると、教頭先生の机のまわりでそんなやりとりが始まっていた。
放課後で、部活に行ってる先生も多かったからだと思う。
職員室に残ってるのはほんの一部の先生だけで、今はそのほとんど、5、6人がそこに集まっていた。
自分の机で仕事を続ける先生も、微妙な表情を浮かべながらあたし達をそのまま見送る。
確かにこの空気だと、声を出さない方が賢い。
「そんなもの、根も葉もない噂でしょう。
確かに彼女にはテストの度に課題を出していますが、それは彼女の点数の問題ですし。
自分の担当した科目の生徒の出来が悪かったら、きちんと指導することが僕の役目だと思っていますが?」
「そうは言っても、新聞部の生徒にここまで書かれて写真まで撮られては……」
「世間一般に出回っている新聞にだって誤報があるんですよ。
生徒の作るものに間違いがあってもおかしくはありません」
質問攻めにあってる瑤に、ひるむ様子は全くない。
堂々とした態度に戸惑っているのか、他の先生達の声はそこまで強いものでもなかった。
「普段は礼儀正しく振る舞う峯岸さんが、敬語も使わずに声も荒げていたって言うじゃありませんか。
それは、穂高先生と親密だということになりません?」


