「美海!」
どのくらいぼーっとしてたんだろう?
ばんっと開けられたドアの音で、あたしは自分の顔を動かした。
それまで何をしてたのかはよくわからない。
気付いたら、あたしは瑤のイスに座っていたみたいだった。
「美海!こんなとこで何やってんの!?ほらっ、とりあえず立って!」
ずかずかと部屋に入って来たありすが、無理矢理あたしの腕を引っ張る。
それに合わせて、あたしはふらふらと立ち上がった。
「何?」
「何じゃない。穂高先生が教室に来て、美海を連れて職員室に向かうように言われたの。
何があったかはよくわからないけど、とにかく行くよ」
「行ってどうするの?」
「どうするって?」
行って、どうにかなるものじゃない。
ありすの話を聞く限り、瑤がこの部屋を出てから時間はそんなに経ってないんだと思う。
でも、状況は確実に良くない。
「新聞部の子に、ここで瑤と話してるのを聞かれたの。
追加課題のことでここに来てたんだけど、あたし、普通に瑤と言い争いみたいになっちゃって……。
でも、あたし達本当に、付き合ってるわけじゃないから。確かにあたしは瑤が好きだけど、でも……」
上手くバランスが取れなくて、思わずイスに倒れ込んだ。
こんな風に弱音を吐いたことなんて、一度もない。
初めて見た自分の一面が怖くて、どんどん体に変な力が入る。
「ねぇ、今の美海、全然美海らしくないよ」


