「やっぱり今回も来たじゃねーか。俺の仕事増やしやがって」
追加課題対象者に見事に選ばれたあたしは、いつものように社会科指導室に来ていた。
「他にはいないの?」
「俺が受け持つのは担当クラスの生徒だけだし」
自分の席に座ってパソコンを触りながら、瑤が面倒くさそうに答える。
「不公平」
「何とでも言え」
作業が終わったのかな。
パソコンから手を放した瑤は、机の引き出しからプリントの束を取り出した。
そのまま立ち上がって、あたしにプリントを渡してくる。
問題集やテストの過去問題が並ぶプリントを見ていたら、何となくもやもやした気分に取りつかれた。
「てゆーか、噂になってるってこの間教えたよね?わかってるならこんなこと、やめれば良いじゃん」
「いや、俺も教師だし」
「あたし、子どもじゃないんだからちゃんといろいろわかってるし。職がなくなったらどうするのよ!?」
「その時に考える」
けろっとしてそう答える瑤が、あたしには信じられない。
一体、何を考えてるんだろう?
プリントを手放して手持無沙汰になったのか、瑤は自分の机に軽く体を寄せてから両腕を組んだ。
「馬鹿でしょ」
「馬鹿だよ。人間、馬鹿じゃなくなった時点で終わりだろ」
「意味わかんない」


