2年3組乙女事情


「やっぱり今回も来たじゃねーか。俺の仕事増やしやがって」



追加課題対象者に見事に選ばれたあたしは、いつものように社会科指導室に来ていた。



「他にはいないの?」


「俺が受け持つのは担当クラスの生徒だけだし」



自分の席に座ってパソコンを触りながら、瑤が面倒くさそうに答える。



「不公平」


「何とでも言え」



作業が終わったのかな。


パソコンから手を放した瑤は、机の引き出しからプリントの束を取り出した。



そのまま立ち上がって、あたしにプリントを渡してくる。



問題集やテストの過去問題が並ぶプリントを見ていたら、何となくもやもやした気分に取りつかれた。



「てゆーか、噂になってるってこの間教えたよね?わかってるならこんなこと、やめれば良いじゃん」


「いや、俺も教師だし」


「あたし、子どもじゃないんだからちゃんといろいろわかってるし。職がなくなったらどうするのよ!?」


「その時に考える」



けろっとしてそう答える瑤が、あたしには信じられない。



一体、何を考えてるんだろう?



プリントを手放して手持無沙汰になったのか、瑤は自分の机に軽く体を寄せてから両腕を組んだ。



「馬鹿でしょ」


「馬鹿だよ。人間、馬鹿じゃなくなった時点で終わりだろ」


「意味わかんない」