2年3組乙女事情

「点数の部分に星のマークが書いてあった人には、いつも通り追加課題を解いてもらう。
このクラスは平均点が良いだけあって、該当者も少ないけどな」


「先生!追加課題って何点以下なの?」



ありすの後ろの席、榎本さんが元気良く手を挙げる。



「それは一応伏せた方が良いんじゃないか?点数バラされたくはないだろ、みんな」


「えー!でも気になるっ!今後の参考までに!」



食い下がる榎本さんに乗るように、他の子もざわざわと声を上げ始める。


思わず眉間にしわを寄せながら瑤を見ると、瑤も同じようにしわを寄せながら、だけど大きく笑った。



「じゃあ少しだけな。平均よりもマイナス10点以上あると危険だと思え。毎回そのくらいからを対象範囲だって考えてる。
まぁ、対象範囲は多少上下するけどな」


「それって、適当?」


「そう言われると困るな。平均も参考にはするけど、問題を見て『このくらいは取ってもらわないと困る』って俺が思った点数に満たなかった人を呼ぶこともあるし。
適当って言われれば適当か」



にやりと片方の頬を上げた瑤を見て、みんなの方が苦笑いをする。


先生がこんな適当でどうするんだって話よね。



「だから、点数に関係なく追加課題を解いてみたいって人がいれば、問題はやるから申し出ろよ。
質問も、一応受け付ける」


「一応って何ー?」


「そーゆーところは気にしない!日直ー、挨拶頼む」



みんなからの投げかけを軽く交わすと、瑤は強引に授業を終わらせて教室を出て行った。



追加課題を出すのは、あたしが“特別”だからじゃない。

必要があれば、誰にだって課題は出すし、質問も受け付ける。



「穂高先生さすがじゃん。で、美海の点数は?」



いつの間にかあたしの席まで来ていたありすが、思ってたことをさらっと言う。


そんなありすににっこり微笑んでから、あたしは戻ってきたテストを鞄に突っ込んだ。