「七瀬! 帰らない?」
教室に入って来た先生にびっくりした表情を向けられるのを6回繰り返して迎えた放課後。
あたしは、荷物をまとめてから七瀬に声をかけた。
「ごめんっ!あたし、今日はちょっと寄らなきゃいけないところがあって……」
「あ、もしかしてお父さん?」
「うん。一緒にご飯食べようって」
「そっか!楽しんできて。また明日ね」
「うん。またね!」
楽しそうに手を振る七瀬に背中を向けて、1人で少しにぎやかになった廊下を歩く。
今日は、さっくり、まっすぐ家に帰ろう!
七瀬がいたらちょっとは髪型で落ち込んでた気分もごまかせるかなって思ったけど……
予定が入ってるなら仕方がない。
いつもの何倍かって思うような速さで下駄箱に着いたあたしは、急いでローファーに足を入れた。
割と早い時間に教室を出たし、たぶん誰にも会わないはず……!
「あれ? 清夏?」


