2年3組乙女事情


散っていく葉っぱ。

茶色に染まる町。

嫉妬に別れ。

残された自分。



……全部、とてもじゃないけど美しいとは言えない。



それなのに……――――



「ありがとうございます。その通りですよ」


「え?」



口から出任せのちょっとした感情論。



先生だって困った顔をするって思ってた。


だから、予想外の微笑みには目を見開くしかない。



「大抵の人は、殺風景になっていく秋の景色や、好きな人との別れを悲しんでおしまいです。
日比谷さんの言う、ネガティブなイメージ、ですね。
しかし東は、そのネガティブさの裏に垣間見える、ポジティブな部分を、しっかりと最後まで大切にしています」



そこまで言うと、先生は一度言葉を切った。



窓から入ってくる生温い風が、教壇に置かれた教科書を鳴らす。



「散っていく葉には堂々と、赤々と色付く時期があった。辛い別れの前には、精一杯尽くして、笑った時期があった。
寂しい風景とは裏腹に、予想外に、秋の夕暮れには強い思いが秘められているのだと。
そう感じたから、東は“美しかったのだろう”と表現したんです」



それはつまり、アズマって人が

弱々しい秋の夕暮れに含まれた強さに、ギャップを感じて


そして……



「彼は、その部分に感動したんでしょうね」



……って、ことか。