散っていく葉っぱ。
茶色に染まる町。
嫉妬に別れ。
残された自分。
……全部、とてもじゃないけど美しいとは言えない。
それなのに……――――
「ありがとうございます。その通りですよ」
「え?」
口から出任せのちょっとした感情論。
先生だって困った顔をするって思ってた。
だから、予想外の微笑みには目を見開くしかない。
「大抵の人は、殺風景になっていく秋の景色や、好きな人との別れを悲しんでおしまいです。
日比谷さんの言う、ネガティブなイメージ、ですね。
しかし東は、そのネガティブさの裏に垣間見える、ポジティブな部分を、しっかりと最後まで大切にしています」
そこまで言うと、先生は一度言葉を切った。
窓から入ってくる生温い風が、教壇に置かれた教科書を鳴らす。
「散っていく葉には堂々と、赤々と色付く時期があった。辛い別れの前には、精一杯尽くして、笑った時期があった。
寂しい風景とは裏腹に、予想外に、秋の夕暮れには強い思いが秘められているのだと。
そう感じたから、東は“美しかったのだろう”と表現したんです」
それはつまり、アズマって人が
弱々しい秋の夕暮れに含まれた強さに、ギャップを感じて
そして……
「彼は、その部分に感動したんでしょうね」
……って、ことか。


