その日、結局バイトを休んだあたしは早めに家に帰った。


母親はまだパートの時間だったらしくて家にいなかったから、代わりに夕食を作る。


自分の部屋へ行って一息ついた時、本当にあたしの部屋には水色の物が多いな、と思った。


峯岸美海が似合うと言ったピンクは、制服のリボンとリア女名物のスカートくらい。



あたしは、思い立って、部屋の掃除を始めた。








「峯岸美海!」


朝、教室へ入って一番に峯岸美海の席へ行った。


祐貴を含めたクラスメイトはかなり驚いていたけど、峯岸美海は例のポーカーフェイスでこっちを見た。


「フルネームで呼ばないでって言わなかった?」


読んでいた本を閉じて、彼女は言った。


「そんなことより、……これ!可愛いでしょ?」


そう言って、彼女の机の上で通学鞄を開いた。


中には、ピンクのポーチに、筆箱、鏡やハンカチが入っている。


ノートは使い掛けだったから水色のままだけど、それはまぁ、仕方がない。


一瞬目を見開いた峯岸美海だったけど、すぐに微笑んであたしを見た。


「やりすぎよ。気持ち悪い」


「可愛いからいいでしょ!」


これ以上は無理、というくらいにっこりと笑って、あたしは自分の席へ戻った。