昨日。

学校から帰ったあたしは、中村さんが新聞で見ていた歌を調べた。



インターネットって、本当に便利よね。


法律のことはよくわからないけど、簡単にその曲の動画が見つかっちゃうんだから。



前奏と1番だけだけど、聞いた音から適当に自分でメロディーと伴奏になりそうな音を拾って、ピアノで弾けるように練習した。



だけど、ピアノだけじゃ少し物足りなくて……


結局、あたしは歌詞も覚えて、ピアノを弾きながら歌えるようにもした。



あんなに長い間ピアノと向き合ったのは、本当に久しぶりだと思う。



でも、中村さんとまともに口を聞いてもらえるようにならなきゃ気が済まないって思うのと同時に

中村さんに喜んで欲しいっていう気持ちもあって……。



だから、あんなに必死に練習できたんだと思う。


気持ちを込められるように、細かい部分にこだわれたんだと思う。



……新聞を見てた時の中村さんの表情が、忘れられなかったから――――



だから、今回だけはきらきらしたピアノを弾きたかったの。

ちゃんと弾き込んで、ちゃんと自分のモノにしてから演奏したかったの。



あたしのピアノに足りなかったのは、それだから……。



最後の和音を静かに響かせてから、あたしはゆっくりと両手を持ち上げた。


そのまま、ゆっくりと息を落としてから、イスの上でくるっと回る。



いつの間にか、ピアノの周りには他の利用者さんや職員さんも集まってきていた。



「気に入って、いただけましたか?」



さすがに、ここで拒否されたら折れる。


……今回は、本気で取り組んだんだから――――



「やっぱり、あんたは下手くそだよ」