芹沢鴨っていう人、んなの知らないし、鴨って名前なのか?っていう所から始まりそうだ。もう惠瑠は考えることが面倒くさいのだ。





「わかんないんだもん…」



ぶーっと口を尖らせながら机に体を伏せる。本当に日本史には弱い惠瑠。年号なんて「いい国つくろう鎌倉幕府」の1192年ぐらいしか知らない。内容もあやふやだ。



今の時代、何か一つでも優れていることがあればそれを十分に上達させるために通う専門学校もあれば就職先もある。はっきり言って、今の勉強が役に立つのはほんのわすがな人間だ。惠瑠は幼いときから剣道一筋。今は師範代の位までについた。だから勉強はまったくというわけではないが必要ない。



それでも学ばなければならない。―――ツマラナイ時代だ。惠瑠は思う。だがツマラナイ時代からこそこうやって平和に暮らせる。戦争のない平和な暮らしを。でも昔の人には争い事や戦争もあった。その人たちは何を思って生きていたのだろうか。





康介はペンをくるくる回しながら、何か考えこんでる惠瑠を見て苦笑する。





「なあ惠瑠、芹沢鴨は人間としてはよく非難されることもあったけど俺は一番武士としてスゲーって思うんだ。それに剣の腕もすごかったんだぞ。お前みたいにな」


康介は何故か嬉しそうだった




「私は強くないよ。力じゃあ康ちゃんにすぐ追い抜かれそうだし、それに女だし」




そうだ所詮、女は女。男女平等だと誰かは言うが、力の強さはどう考えても平等ではない。女は不利だ。今は、師範代だが終わりはいつかくる。残るのは男。



それに運動神経の良い康介が認めてるということは、芹沢という男も、きっとかなり強かったのだろう。





「あのな、惠瑠。男、女なんて関係ねーんだよ。お前は、何て言うんだろ…あれだ、試合の時だけ目が他の奴に比べてつえーんだよ。しかもとんでもなくな。」




これ一応誉め言葉だからな、と笑った。