外へ出れば生ぬるい風が体に吹きかける。午前と違ってまだ暑くはないが、涼しくもない。少し汗が出る程度だ。








「…っ」






ああ、我慢してたのになあ。





止めどなく涙が溢れてくる。やっぱり寂しいんだなと思った。お妙さんの存在は大きすぎた。本当に感謝しきれないほど感謝してる。そして、今までのことを思い出してまた涙が溢れた。






すると、ザッと砂を蹴る音がする。







「やっぱり、お前ぇは甘いな。」






芹沢の厳しい声が惠瑠に降りかかる。そして、もう一度確認の為に惠瑠に言う。






「やれるのか」



と。





なんでそんなことをまた言うんだ、と惠瑠は顔をしかめる。性格悪いなと芹沢を見れば、案の定意地の悪い顔をしていた。







「当たり前だ」






「おいおい、いつまでそんな口をきくんだ。俺はお前より上の人間になるんだぞ。」



そう言って、また口元を吊り上げている。





惠瑠はため息をつきながら「わかりました」と不服そうに言った。それを見てまた芹沢は面白そうに惠瑠を見る。それが何度か繰り返された。






――ふわっと風が吹く。いや、実際そんな爽やかではない。むしろ気持ち悪い、生暖かい風だった。












新しい風が吹いた。