「ふー」




芹沢が出ていき一息つく。どうやらOKということらしい。出るときに惠瑠に振り替えって「またあとでな」とだけ言って右手を上げて出ていった。




まあ、なんにせよ良かった。はっきり言って許してくれるなんて思ってもなかったし。





またひとつ息を漏らす。








「……惠瑠」



惠瑠の後ろからお妙さんの困惑の声が聞こえた。惠瑠は眉を下げて振り返る。やはり急なことにお妙さんは戸惑いを隠せていなかった。







「……ごめんお妙さん、急にこんなこと言って。お妙さんには本当に感謝してる。身ず知らずの私を拾ってくれて、優しくしてくれて」





「……」






「でも、行きたいんだ芹沢さんの所に。私はやっぱり平凡より波乱な人生のほうがお似合いらしいから、あの人たちに着いていきたいんだ。」






「……」




お妙は黙ったまま惠瑠の話を聞いていた。すると、はあとため息をつき、口元をあげて惠瑠を見る。






「ほんま…、どうしようもない子やなあ…。」





「ご、ごめんなさい…」





「別に謝らんくてもええ。あんたが変わっとることくらい分かっとるわ」






「はは…」




惠瑠は頭をわしゃわしゃ掻いて苦笑いする。なんか半分飽きられてるし。でもお妙は楽しそうな顔をしていた。






「頑張りなさい」






そう言うとお妙さんは、初めて会ったときのように優しく抱き締めてくれた。惠瑠は少し涙が出てきて寂しさを感じた。





「…私、お母さんいないけど、お妙さんがお母さんみたいで嬉しかったよ。」





「なに言ってんの…。今でもあんたは娘当然や」





お妙の言葉に嬉しくてギュッと着物を握った。でも、これ以上一緒にいたら判断が鈍りそうになるからお妙から離れ、







「ありがとう」








ただ、それだけ伝えて急いで出口へ足を進めた。