「ま、桜のことだし告白なんてまだまだ先だろうけどさー、はやくしないとやばいんじゃないの」
「や、やばい…って?」
「先輩、意外と人気あるんだよ?私たちの学年にもいっぱい好意もってる女子いるみたいだし」
「…知ってる」
以前、まだ部活に入りたての頃に、先輩が告白されてる場面を見たことがある。
相手は、私たちと同学年で入学式からすでに噂になるほどの美貌の持ち主だった。
非の打ち所のない彼女を、先輩はものの見事にフッた。
今でも、鮮明に思い出せる。
―――ごめん、気持ちは嬉しいけど君の気持ちに答えることはできない。…本当にごめん
申し訳なさそうな先輩の声、女の子の泣きそうな顔、その女の子の頭をなでた先輩の大きな手。
――私は今まで生きていて、あれほど優しさが残酷だと思ったことはない。


