「好きって、どういう事?」

 少女は、僕が言った言葉がまるで

 不快なものだったかのような調子で
 
言葉を吐き出した。

「私には、好きという感情が分からないの。

 相手に対する自分の気持ちが、

 不快、快しかないのよ」

 早口で、身体中の酸素を吐き出すように。

力強い言葉が降り注ぐ。

と、思えば急に。

「ねぇ、教えてよ……」

 砂糖菓子の様に甘く、壊れそうな声で。

「貴男は、私をどう思っているの?」

「貴男は私をどうしようというの?」

 みるみる少女の瞳に雫が溜まる。

「ただ“好きだ”なんて言われても、

 困るのよ……」

 そう言い切ると、少女は、崩れた。