リセット

零の運転する車を走らせること数分───


校門へと続く並木道が見えてきた。



桜が舞って綺麗だ。


「サラ、お前先、行ってろ。俺車どっかに停めてくるから」

『わかった』



私は車から降りて並木道をゆっくりと歩く。



桜ヶ丘学園



それが今日から私が通う高校の名前。何の偏屈もない学校だが唯一自慢出来るのがこの並木道。



春に満開の桜を咲かせる桜並木───


この学校を選んだ一番の理由はそれだ。



ふわりと舞い散る桜


幻想的でまるで夢の世界に連れて来られたみたいだ。



ずっとこのまま咲き続ければいいのにと


願ってしまう私───



「サラ!!」


背後から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


この独特のあるハスキーな声は零だ。



私は立ち止まって後ろを振り向いた。



『零』

「綺麗だな、桜」


桜並木を見て言う。

『うん』

「サラと似てる」

『?…なんで?』


桜と私が似てるだなんて言う零はちょっとおかしいと思った。


「たった数週間しか咲くことが出来ない桜、側にいるようで遠くいるサラ───小さくて、でも芯は強くて俺が手を離せば何処か遠くへ飛んで行く」

『????難しい…。私、空飛べないよ?』


零の言ってる意味が私にはまだ幼すぎて分からなかった。



辛そうで悲しげなその表情───


「っぷ!!…当たり前だ。人間が空、飛べる筈ねぇだろ?」

『でも零、飛んで行くって言った』

「意味が違う。サラはまだわからねぇよ…」



そう、この笑顔


零にはずっと笑顔でいてほしい───



私は誰よりもそれを願う。


.