My Little Baby【短編】



遼ちゃんの部屋を出て、夜の街をとぼとぼと歩く。



いつも遼ちゃんと歩いてた道は、今日はひどく心細いものに感じる。



遼ちゃんはいじわるなときもあるけどやっぱりあたたかくて、隣に並んでいれるだけで安心してしまうんだ。




昨日までは。




今日の遼ちゃんはなんだか違う人みたいだった。




すごくすごく怒ってた。
今まで見たことがないくらいに。



どうしてそんなに怒らせてしまったのかわからなくて、涙が出てしまったけど‥‥




そっと、指先で唇に触れる。



キスは、嫌じゃなかった。



乱暴だったのに、遼ちゃんのキスはやさしかった。




私を求めてるみたいな、抱きしめてくれてるみたいな熱い、キス。




本当は男の子に告白されたのは初めてじゃない。




何度かあるし、キスされそうになったこともある。




でも、今までそれを遼ちゃんに言ったことなんかなかった。




遼ちゃんのあったかい手が、笑顔が、離れちゃう気がしたから。




遼ちゃんを失いたくなかったから。