一時間もたっただろうか。
すでに二箱目に突入したタバコを足で踏みつけ火を消した。
街を彩る人口の光をぼうっと眺めながらただ考えるのはみちるのことばかりだった。
そろそろ帰るか‥‥
冷え切った手でアパートのドアを開けると、思ったとおり誰もいない部屋がそこにあった。
自分の部屋なのに、みちるのいないそこはひどく寒々しくて、まるで他人のような顔をしていた。
もう、あの愛しい笑顔が俺に向けられることもないだろう。
働かない頭でぼんやりと考える。
自分から部屋を出てみちるが帰るように言ったのに、本当にいないのを見ると頭を殴られたようにぐらぐらとした。
―――勝手だな。
自嘲気味に小さく笑う。
みちるの涙を見てもなお、心のどこかで期待していたのだと知る。
みちるが、俺のことを好きでいてくれてるんじゃないかって。
みちるがそんなふうに思っていないことくらい、ずっと前からわかっていたはずなのに。

