嫉妬だった。
想いを伝えて、みちるの頬を染めさせた年下の顔も知らない男に対する激しい嫉妬と、
―――子どもじみた独占欲。
その結果がこれだ。
無理矢理みちるの唇を奪って、大きな瞳いっぱいにたまった涙はとうとう零れ落ちて頬を伝い落ちてゆく。
惚れた女泣かせて、俺は何がしたかったんだよ?
押し寄せる激しい後悔と自己嫌悪。
「ごめん‥‥」
涙を拭おうと手を伸ばすと、みちるの肩がびくりと震えたのがわかった。
怖い、よな‥‥
行き場のない手をぎゅっと握り締め、胸のあたりを掴む。胸が苦しくてうまく息ができない。
部屋を満たす沈黙に最初に耐えられなくなったのは俺の方だった。
「今日は送って行けないけど‥‥気をつけて帰れよ」
そう言って立ち上がり、部屋を出る。
ひんやりとした空気が肌を打つ。いつもは億劫になる冷たい風が、今は心地いい。血が上った頭を澄んだ空気が冷ましてくれる気がした。
部屋に帰ったら、みちるはいないだろう。
そして、もうきっと、あの小さなアパートに来ることもない。
胸が、痛い。
―――きっと、その方がいい。
またみちるに会ったら、俺はまたみちるに何をするかわからないから。
また、触れたくなってしまう。
彼女の一挙一動は、いとも簡単に俺の理性を砕くから。
そしてまた、誰よりも大切な彼女を、きっと傷つけてしまうから。

