My Little Baby【短編】


「――――っっ!!」

振り返る前に大きな手で口を塞がれる。
大きく見開いた目に映るのは、大きな黒い影。
どくん、と大きく心臓が跳ね上がる。

「きみ、かわいいねぇ」

野太く粘っこい声が耳に張り付いてくる。
口を塞ぐ腕に手をかけてもピクリとも動かない。

なに、誰、なにこれ、こわいっ。

「んんっ」

誰か、誰かっ。

背中に感じる体温が気持ち悪い。
背中を押され、芝生の上に倒される。
仰向けにされて腕を頭上で一まとめに抑えつけられ、足の間に男の体が入り込む。
腕も足もがむしゃらに動かした。

いやだ、こわい、こわいっ。

「おとなしくしろ!」

ものすごい衝撃で目の前が赤く染まる。
ジワリと血の味がして、頬が熱くなった。

殴られた…?

恐怖と痛みで抵抗が止まる。
生まれて初めて殴られた痛みと衝撃は恐怖を一層煽り立てて、動くことができない。
その間にも、男の手は制服のリボンを毟り取り、シャツのボタンを引きちぎっていく。

「ひ、ぁっ、」

喉の奥から空気のような悲鳴が零れて、男の手がいつの間にか口から外されていることに気付くが、声を出すことができない。

声を、上げなきゃ。助けを、呼ばなきゃ。

「、っ、、」

こえが、でない。

喉は忙しなく空気を吐き出すばかりで、僅かな音さえ生み出すことはなく、今にも破れそうに打ちつける心臓の音ばかりが耳に響いた。
もう片方の手にするりと太ももの内側を撫でられ、自分でさえめったに触れないところに男の手が伸びる。