「だから‥」
「そいつは、みちるのことが好きなの?」
どくん、と心臓が跳ねたのがわかった。
「‥みちるの、年上の幼なじみって言ってた男だろ?」
聞きたくないのに、祐介のやさしい声は容赦なく耳に入ってくる。
「俺、そいつより絶対みちるのこと好きだよ?‥‥みちる?」
黙ったままの私に祐介の手がそっと伸びてくる。
「‥やぁっ」
ぱしん、と乾いた音が小さく響く。
自分が祐介の手を払った音だと気づいて呆然とする。
「‥ごめんなさ‥」
「みちるに」
祐介の低い声が、私の小さい声を強く遮る。
低すぎる声が怖くて肩がびくりと震えた。
「そんな顔させるやつに、みちるは渡さない。俺のほうがみちるを大切にしてやれる。だから‥」
「そうだね」
「‥え?」
黙って聞いていた私がいきなり声を出したことにびっくりしたらしい。
うん。
私もそう思うの。
「祐介は、きっと、大切にしてくれるよね」
いつもふざけてばっかりだけど、何に対しても一生懸命なのはちゃんと知ってる。
いつも何気なく気遣ってくれる優しい人だってことも。
きっと、私だけを見て、大切に大切にしてくれる。

