「だからこの間、彼女できたって聞いたときは俺もタクミも驚いたし、それ以上にホッとした。
やっとふっ切れたんだって…」


大野センパイはハッとして口をつぐんだかと思うと、謝った。


「ごめん!
こんなの、チエちゃんにする話じゃないよな」


「いえいえ、全然大丈夫です」


アイツが過去にどんな恋愛してようが、私にはちっとも関係ないし。


…でも。


私と本当に付き合ってるわけじゃないってことは、センパイはまだ次の恋愛に踏み出せていないってことで。
つまり、ふっ切れたわけでもないってことだ。


もしかしたら、センパイは今もまだその人のことを忘れてないのかもしれない。


あの橘センパイが忘れられない人…。


あのオトコがそんなに好きになった人って、一体どんな人なんだろう…。


そのあと、せっかく大野センパイが家まで送ってくれたというのに。


私の頭の中はなぜか、見たこともない橘センパイの思い人のことでいっぱいだった。