この男、偽装カレシにつき

「…そんじゃ俺は先に帰るから、あとは2人でお好きにどーぞ」


課題を提出して戻ってきた私の顔を見るなり、橘センパイは立ち上がった。


「お好きにって…」


おい、メガネ。
まだ熟睡してる大野センパイと、一体何をどうしろって言うんだ。


…とは言え。
せっかくだから、大野センパイの寝顔は心行くまで堪能させてもらうけどね。


橘センパイは私と入れ違いで図書室を出ようとして足を止めた。


「そうだ、これ」


そう言って私の手に何かを掴ませると、「貸し、イチな」と言い残して出て行った。