この男、偽装カレシにつき

「…なるほど、俊介ねぇ」


橘センパイは優雅にロイヤルミルクティーの缶を傾けながら、ふぅんと鼻を鳴らした。


もうとっくに授業は始まってるというのに、私たちが高校の校舎裏の非常階段にいるのには訳がある。


告白する相手を間違えたという事実が、悲しいかな橘センパイの興味を引いてしまったようなのだ。


「お前、あいつのドコに惚れたわけ?」


「顔と…」


「何だよ顔かよ」


うるさいなー。
と、って言ったでしょ。
そっちから聞いてきたんだから、最後まで黙って聞きなさいよ。


「顔だけじゃなくて優しいとこです」


半ば当てつけのように言ってみたケド。
本人はその嫌味に全く気付く気配はない。


「…去年の高校入試の日、大野センパイに助けてもらったんです」


仕方なく、私は話し始めた。