この男、偽装カレシにつき

あ、橘センパイの手。
結構大きいんだ。
私のシャーペンが、いつもより一回り小さく見える。
ごつごつ骨張ってて、やっぱり女の子の手とは全然違う。


それに、指もすらっと長い。
きれいに切り揃えられた爪が、神経質なセンパイらしいというかなんというか。


私はチラリと橘センパイの顔に視線を移す。


センパイはあの手で、女の人とあんなコトやそんなコトしてたのかな…。


はっ、しまった!
何考えてるの、私!
エロオヤジかっ!


「なんだよ」


私の視線に気付いたセンパイがこっちを見た。
私は慌てて首と手を振る。


「何でもないです!
エッチなことなんてちっとも考えてません」


しまったー!
とっさにバカなことを口走ってしまった。