この男、偽装カレシにつき

「人に貴重な時間を割かせておいて、考え事するとはいい度胸してんじゃねーか」


橘センパイの持つシャーペンがコツコツ机を叩く音が、次第に強まっていく。
まずい、コイツの機嫌の悪さがマックスに達しかけている。


確かに、私の課題を解くスピードはハンパなく遅い。
それは、橘センパイのファインプレーで一緒に図書室に付いて来た大野センパイも、いつしか隣で寝息を立ててしまうほどに。


だけど、すぐ側で愛しの大野センパイが無防備に眠っていたら、もともとない集中力がさらになくなるのは自然の摂理。
そんな負の連鎖反応ゆえに、私の課題はなかなか終わらないのだ。