この男、偽装カレシにつき

「チエちゃん?」


急に大野センパイに肩に手を置かれた私は、


「!!!!!」


声にならない声を上げながら、飛び上がるように後ずさった。


一瞬にして、私とセンパイとの間に数メートルの距離ができる。


まるでモーゼが海を切り開いたようなその光景を見ながら、


「えーと。
ゲームが見つかった、って言おうとしたんだけど…」


そう言って頭を掻く大野センパイの手には、しっかりゲームが握られている。


「そこまで逃げられると、さすがに少し傷付くな…」


大野センパイがぽつりとつぶやいたとき。


トントン。
ノックの音に少し遅れて、部屋の扉が開いた。