この男、偽装カレシにつき

そうだ。
うっかり外し忘れてた。


龍センパイの家を出ると、私はすぐさま指輪に手をかける。


指輪なんて慣れないものしてたせいで、指に違和感ありまくりだっつーの。
なくなってせいせいするってもんよ。


第一、あんなにあっさり捨てていいと言えるものに、意味なんてないだろうし。


あの女タラシのことだから、女子を喜ばせるのなんてお手の物だったってことよね。


それにまんまと嵌まって感動しちゃった私も私だケド。
糠喜びさせるなんて、本当に性格の悪いヤツ。


いいわ。
橘センパイも安物だって言ってたくらいだし。
こんなもの、今すぐにでも捨ててやろうじゃないの。


私は外した指輪を、道路脇の植え込みに向かって振りかぶった。