この男、偽装カレシにつき

「お前こそ何してんだよ。
こんなとこにチエちゃん一人残して」


大野センパイの言葉に、橘センパイはツカツカと歩み寄って私の腕を掴むと、


「お前には関係ねーだろ。
…チエ、お前も他の男にくっついてんじゃねーよ」


そう言って私を引き寄せた。


その瞬間立ち込めた橘センパイの甘い香りが、私の胸を苦しめる。


何それ。
何でそんなこと言うの?


私のこと振ったクセに。
雪乃さんを選んだクセに。


彼氏みたいなこと言わないで。


振り回されるのはもう嫌だ。


「離して…っ」


私は思わず橘センパイの手を振り払っていた。