この男、偽装カレシにつき

何でこんなに早く戻って来てるの?


私に愛想を尽かして雪乃さんの元に向かってから、まだそんなに経ってないじゃん。


雪乃さんに会って来たんじゃないの?
雪乃さんのことまだ好きなんじゃないの?


そのとき。
橘センパイの視線が私の手に向けられているのに気付き、大野センパイと手を繋いだままだったことを思い出す。


ヤバッ…!


別にやましいことがある訳じゃない。
なのに、とっさに振り払おうとした私の手を、大野センパイはギュッと握りしめた。


え…?
私は思わず大野センパイを見上げる。


「…何してんの、お前」


その様子を見ていた橘センパイは、眉を潜めてそう言った。